
〜アンプティサッカー若杉幸治さんが語る「やればできる」〜
スポーツには、「する」「観る」「支える」「知る」という4つの関わり方があります。
10月18日(土)、焼津市立豊田小学校の体育館で行われた「第5回リスペクト教室」では、その中でも“知る”ことに焦点が当てられました。
講師に迎えたのは、アンプティサッカー(切断障がいのある選手がクラッチ=松葉づえを使ってプレーするサッカー)の元日本代表、若杉幸治さん。
自身の経験を通して「リスペクトの本当の意味」を語りました。
右足を失っても、サッカーをあきらめなかった

若杉さんは25歳の時、仕事中に交通事故に巻き込まれ、右足を失いました。
「当時は本当に何もやる気が起きなかった」と語ります。
それでも「もう一度サッカーがしたい」という思いを捨てきれず、20回以上の手術を受けながら再起を目指したといいます。
結果として右足を切断することになりましたが、そこからが新しい挑戦の始まりでした。
「足を失ったことで何もできないと思っていたけれど、クラッチ(松葉づえ)を使えば、またサッカーができる。
それを知った時、心の中で何かが変わった」と語りました。
家族とのエピソード、そしてリスペクト
若杉さんは、事故後の家族との関係についても率直に語りました。
「つらい時期もあったけれど、家族が支えてくれた。息子と一緒にサッカーをするのが夢だったんです」
講演では、息子さんがアンプティサッカーの練習に関わり、時には父親と一緒にピッチに立ったことにも触れました。
「息子に“落ち着いて”と声をかけられたこともあります。
それを聞いて、“ああ、自分も支えられているんだな”と感じた」
父として、選手として、そして一人の人間として。
リスペクトとは「相手を敬うこと」だけでなく、「自分を認めること」でもあると伝えました。
“体験する”ことで見える世界
講話のあとは体験会が行われ、参加者は実際にクラッチを使って歩行をする体験をしました。
バランスを取るのは想像以上に難しく、転びそうになりながらも笑顔で挑戦する姿が印象的でした。
「難しいけど楽しい!」「これで走るのすごい!」といった声があがり、会場は一体感に包まれました。
若杉さんは、「クラッチや義足は高価なもの。見えない努力がそこにある」と話し、
スポーツの裏にある現実にも目を向けてほしいと呼びかけました。

“思いやり”は小さな行動から
司会を務めた瀬戸脇正勝さん(静岡障がい者サッカー連盟理事)は、
「リスペクトとは、相手を思いやること。そして自分を大切にすること」と締めくくりました。
若杉さんも最後に「上を向いて歩ける仲間がいれば、人はまた前を向ける。
今日の体験が、みんなのやさしさにつながってくれたらうれしい」と語りました。
焼津から広がる“リスペクトの輪”

このリスペクト教室は、焼津市サッカー協会をはじめ、豊田地区コミュニティスクール、地域クラブ、学校関係者など多くの協力で開催されました。
体育館に響いたクラッチの音は、単なる練習の音ではありません。
それは、挑戦する勇気と、他者を思いやる心の音でもありました。
障がいの有無をこえて、同じフィールドで笑い合う。
その一歩が「リスペクト」の始まり。
焼津から生まれたこの小さな輪が、地域や世代を超えて広がっていくことを願っています。
講演会概要
第5回リスペクト教室/アンプティサッカー若杉幸治さん講話&体験
日時:2025年10月18日(土)18:30–20:30
会場:焼津市立豊田小学校 体育館(焼津市五ケ堀之内2)
登壇:若杉幸治さん(アンプティサッカー元日本代表)、司会・進行/瀬戸脇正勝さん(静岡障がい者サッカー連盟 理事)
対象:小学生以上どなたでも/入場無料(先着150人)
主催:焼津市サッカー協会
協力:豊田地区コミュニティスクール、ガネーシャ静岡AFC、やいだら通信 ほか
(※当日の様子は、静岡新聞社・焼津とこチャンネル・Instagram等でも公開予定)





















